4.ネプロス処理(化学研磨)と電解研磨の違いを知ろう
前項『3.表面処理技術の関係を視覚的に分類してみよう』で『ネプロス処理』と『電解研磨』は『化学的』で『痩せる』グループの仲間だと説明しました。
もし言葉の意味がわからない方は、目次から読み直してみてください。
ここであらためて『電解研磨』と『ネプロス処理』の原理について考えてみましょう。
電解研磨の原理概念は左図のように示されます。
電解研磨液と呼ばれる酸性液体に、ワークを漬け込み、
ワークを陽極とし、容器を陰極とし電流を流すと、
ワークの陰極側に面した表面の鉄やニッケル原子が酸性液体に微量溶け出し、
ワーク表面がエッチング(研磨)されます。
左図のようにパイプ状のワークの場合、
陰極である容器から遠いパイプ内面は研磨されないため、
パイプ内面に陰極を設置すると、内面も研磨することができます。
このように電解研磨とは、
電気的なアシストを用いてエッチングしたい個所を選択的に削ることができる
化学研磨の一つの技術と言えます。
一方の化学研磨は、右図で示されるように、もっと単純です。
化学研磨液と呼ばれる酸性液体にワークを投入し、
ワーク表面を溶かします。
液が触れている部分は、ワークの表だろうが裏だろうが
均一にエッチングされ、電解研磨のような選択性はありません。
右図はステンレスをネプロス処理する場合ですが、
液がほぼ沸騰する温度、およそ94℃±2℃に加熱して処理を行います。
銅や真ちゅうは室温、鉄やチタンは室温〜40℃、
アルミニウムは110℃で処理を行い、
またそれぞれ処理に用いる薬液も当然違います。
電解研磨は選択的であるがゆえに、狙った場所を狙ったように削ることが可能で、結果として少ないエッチング量でかなり細かい粗度に仕上げることが可能ですが、一方で必ず電極を必要とするため、電極を近づけられないような場所(例えば細いパイプの内面)は研磨することができません。
また細い部分や薄い部分は電荷が集まりやすく、意図以上にエッチングされてしまったり、陰極と陽極が接触した場合はショートして穴があいてしまったりします。
化学研磨では逆に選択性が無いので、液さえ触れさすことができれば、パイプの内面でもほぼ均一に研磨されます。
しかし選択性が無いということは、例えば素地が大きく凸凹しているような場合は、その凸凹を狙って平坦化することが難しく、平坦化した時点では相当量を削らなくてはいけないことになってしまいます。
このように、同じ『化学的』な『痩せる』仲間であっても、ずいぶんとそのテクニックや成果は違いますね。
『電解研磨』と『ネプロス処理(化学研磨)』をざっくりとまとめると、以下のようになります。
電解研磨
ネプロス処理(化学研磨)
研磨量
おおむね1〜5μ
(処理時間や電流値で制御可能)
おおむね1〜20μ
(処理時間で制御可能)
到達粗度
サブミクロン
ミクロン
電極
必要
(電極を近付け、選択的に研磨)
不要
(全体的に均一に研磨)
不動態化
どちらも化学的な研磨手法であり、研磨表面でクロムが濃縮され、処理後のワーク表面に不動態被膜が形成される
もっと簡単に言えば、
これらは研磨技術としての原理的な違いですから、そもそも電解研磨と化学研磨を比較することはあまり意味がありません。
互いにメリットがあり、互いにデメリットがあります。
プラスのネジを締めるのにマイナスドライバーや六角レンチを使う人はいません。
それと同じで、ワークの形状や目的に合わせて、電解なのか、バフなのか、バレルなのか、ネプロス処理なのか、何が最適なのかを選択してください。
どれが良いかわからないという場合は、我々もご相談に応じます。
お気軽にお問い合わせください。
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