ネプロス処理ABC

7.彫刻刀で丸太を倒す?

 

バリ取りとしてネプロス処理を考えるとき、よくぶつかる問題として尺度の感覚のズレがあります。

『バリを取ってほしいのだが、品物は痩せたら困る』とか、『この大きなバリを取ってほしい』というもの。

 

ここまでに何度かお話ししているように、ネプロス処理の減肉寸法は最小で1ミクロンくらいから最大でもたかだか50ミクロンくらいです。

前節で解説したバリ取り原理で考えれば、バリの大きさに関わらず、バリの根っこの厚み次第で除去できるかどうかが決まります。

 

例えば、バリ厚が10ミクロンなら、ネプロス処理で片肉5ミクロン品物を溶かせば、バリは根っこから除去されます。

 

しかし逆に、厚みが100ミクロンあったら、ネプロス処理の溶解許容領域を超えてしまうため、除去は不可能ということになります。

ちなみに、許容領域を超えて処理を続けた場合、ピット(孔食)と呼ばれる小さな穴が無数に出現し、

外観は光沢を失って灰色になり、酸洗いに似た仕上がりになってしまいます。

 

つまりこれは、目的とツールの許容範囲が違うために起こっている問題で、技術が悪いのではなく、選択が間違っているのです。

園芸用のシャベルで道路工事はしませんし、スプーンでセメントをかき回したりしませんよね。

 

そこで、ちょっとした興味が湧いて、下のような『大きさの比較表』を作ってみました。

 
 

この表の青色で示したように、ネプロス処理で溶かすことができる寸法の世界は約『1〜30ミクロン』で、

例えば、『PM2.5』とか、『スギ花粉』くらいの大きさに相当し、

細いものの代表とも言える『髪の毛』に相当する80ミクロンくらいの厚みのバリは、除去するのが難しいということが言えます。

 

また、目視で確認できる1ミリくらいのバリをネプロス処理で除去して欲しいという要求が時々あるのですが、

1mmと10ミクロンでは尺度が約100倍ほど違いますから、

上の表では『米つぶ』と『サッカーボール』くらい大きさの差があるということになり、

例えれば、彫刻刀で丸太を倒してくれと言っているようなものだと言えます。

 

一方、ネプロス処理には、処理後のステンレス表面の光沢感が増してピカピカになるという特徴がありますが、

これは、ステンレス表面の粗度が、ミクロンオーダーよりもっと下のナノオーダーの改善がなされていることによって、

上の表にもある『可視光の波長(400〜800nm)』の反射が、より効率的に行われるようになっているのだと考えられます。

さらに、この現象は、可視レベル以下の、例えば菌とか分子レベルのコンタミネーション(異物)のようなものが、

ステンレス表面に付着した場合に、離脱しやすい・吸着しにくいという性能が期待できると考えられます。

(下記、シミュレーション参照)

 

 

まず、
平坦なステンレス面に球体の異物が付着したと想定。



ステンレス面が完全に平坦だと仮定すると、
接点はごく狭い範囲の1か所となり、
吸着力は最少となる。

すなわち、離脱しやすい。

 

 

次に、
ステンレス面が凸凹していると想定。



球形の異物が接触する面が2か所に増えるので、
吸着力は平面の時の約2倍となる。

すなわち、平面の時より離脱しにくくなる.

 

 

実際は、
ステンレス面は立体的に凸凹してるため、3次元の面を想定。



すると当然、球体の接触面は3か所以上に増える。

すなわち、一度付着した異物は、平面の時より凸凹の時より、さらに離脱しにくくなると考えられる。

つまり、異物の付着を低減し、
付着した異物を離脱させやすくするためには、
異物と面の接触が最も小さくなるような、
異物とスケールを合わせた平坦面が必要である。

 

 

 

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